NEXT TEARDROP / 浜田真理子 -2018-

最初に出てきた音がハマダマリコだったことに驚いてしまった。
事前インフォメーションとレコーディング・メンバーから、
勝手にバンド・サウンドを想像していたからだ。
もちろん冒頭の驚きはすぐ安心に変わり、期待が芽生え、
後は新しい彼女の音にふれていく幸せな40分を過ごした。

ネクスト・ティアドロップ
ネクスト・ティアドロップ

ジャケットとライナーのデザインを見れば今作と前作は姉妹のようである。
実際に対になっているという部分はあるのだろう。
2枚で1作のような意識も、もしかしたらあるのかもしれない。
しかし、聴いた感触と印象は明らかに違う。

真理子さんは前作の『Town Girl Blue』についてこう言っていた。

   ドロドロした感情を沈殿させ、その上澄みのところを歌った感じ
   決して真水じゃない
   元は泥水でそれをろ過したもの

『NEXT TEARDROP』は、ここからさらにろ過したと言えばいいのだろうか。
プロデューサーの久保田麻琴さんいわく " 風通しの良い作風 " 。
アルバムのオフィシャル・インフォには " 軽やかさ " なんて単語も見られた。
こうしたことが前作との違いを表すものだとは思うけれど、
しかし、よく聴けば…歌われる歌詞を追いながら聴いていけば、
いつもの浜田真理子だということもわかる。

「まちあわせ」で歌われている寂しさは、しかし何と肯定的なのだろう。
美しいメロディとヴォーカルの表現力。
こんな安っぽい形容しかできないのがもどかしいが、
あなたがいない寂しさよりも、あなたへの思いが勝る、素晴らしい歌だ。
浜田真理子をろ過すれば、こんな名曲が生まれるのである。
アルバムの色を決定づける1曲であり、実際にこの色で貫かれた作品だと思う。

" 風通しの良さ " と " 軽やかさ " というキーワードを、
僕は " ポジティヴ " に変換して提示したい。

聴きものはたくさんあるが、
まずはいわゆるこれまでの特徴である弾き語りではないスタイル。
特にシティ・ポップ感あふれる金延幸子の「あなたから遠くへ」は新境地。
70年代の名盤からの曲です…と紹介されても信じてしまうだろう出来栄えだ。
こんなアレンジに彼女がピッタリとハマるとは思わなかった。
好カヴァーだ。

オリジナルも粒ぞろい。
彼女のコンポーザーとしての素晴らしさ云々を説くのは今更だけれど、
アルバムの冒頭とエンディングに収録された「青い月のワルツ」。
こうしたインストゥルメンタルを聴くと、
歌と言葉が無いからこそ際立つメロディからそれをとても強く感じる。
本当にいいメロディを描くなぁと思う。
加えて、前作に収録された「Chat Noir」と「Yakumo」もそうだが、
彼女のインストは実にかっこいい音だということも言っておきたい。

「昨日の森」は彼女らしい和的なリズムを持つ歌詞が印象的。
「忘れ音」はどことなく細野晴臣を思い起こさせる、これまでありそうでなかった曲。
「さつきの憂うつ」と「Last Order」は2曲とも彼女の真骨頂だが、
見事に最新の音で『NEXT TEARDROP』しているのが素敵だ。
これらのような小品だが佳曲…が並んでいるのも今作の特徴だろう。

そして僕にとっては極め付けの曲が収録されている。
「サヨナラが降るとき」に出会ったのはライヴで新曲として披露された2015年。
それ以来、作品化してほしい曲のひとつだった。
" サヨナラ " というフレーズが、
まさに降ってくるようなピアノによって美しくポジティヴに響く。
歌われているとおり、旅立ちであるサヨナラを伝えてくれる。

   旅立ちの言葉
   新しい場所
   一人で強く歩く
   静かに強く歩く

サヨナラが歌われていても、残るのはこうしたフレーズだ。
お別れの向こう側にある希望を見せてくれるが、
しかし、やはり、どうしようもないサヨナラの切なさをも感じさせてくれるのが素晴らしい。
曲を聴けば、きっと僕のこうした思いをわかってもらえるだろう。

今年、僕にとってこのアルバムを超える作品がリリースされることは、
おそらくもうないだろう。
浜田真理子が新譜を出した年には、必ず毎回こう思う。


     **********


P.S. 「サヨナラが降るとき」

僕が彼女の音楽を素晴らしいと思う理由のひとつに、
その歌われる世界が限定されず、聴く側に置き換えられること…がある。
「サヨナラが降るとき」はその魅力が顕著に表れる曲だと思う。

この曲は、いわゆるAメロ、Bメロ、そしてサビ、間奏と、
それぞれ切り替わるところが絶妙で、音としてはもちろん、
曲を聴くリスナーの頭や心に浮かぶであろう情景や心象もそこで切り替わる。
こうした効果的な構成とアレンジにより、
聴く人それぞれのサヨナラが浮かび、広く深く、心に沁み入ってくる。
耳だけでなく、心も持っていかれるわけだ。

発売日の朝。
通勤時のBGMは『NEXT TEARDROP』だったのだが、
「サヨナラが降るとき」を聴いているあいだ、感情が大きく揺さぶられた。
涙が出てきて、電車に乗るどころではなくなった。
1本、見送る羽目になった。

悲しみや苦しさによる涙ではない。
心地よい涙だった。
きっとほんの少ししかないのだろうけれど、
それでも自分の中に確実にあるキレイな何かが涙になったのである。
誰の中にも存在するキレイなココロやモノをすくいあげてくれる。
こうした力が彼女の音楽にはある。

     **********

ヴィヴィド・サウンドのインフォより引用

2018年で活動20周年を迎える浜田真理子のNewアルバム『NEXT TEARDROP』が完成。
前作に引き続き、久保田麻琴が全編プロデュース。大沢伸一の書き下ろし曲も収録。

久保田麻琴制作による2枚目。
コンビネーションもこなれてきたせいか作風に軽やかさとオーガニックな味わい、風通しさえ感じさせる。
ライブでもおなじみのメンバー、加瀬達、檜山学、池村真理野、瀬戸龍介に加え、
数曲で売れっ子ドラマー、伊藤大地が参加。
6月19日の渋谷クラブクアトロで行われるレコ発ライブにも参加する。
7割がたの新曲オリジナルに加え、
長く浜田のファンであった大沢伸一の書き下ろし(作詞は浜田真理子)、
70年代初頭のレアトラックで金延幸子の名曲がジャジーにカバーされている、など見所、聴きどころ満載である。
全曲まず2インチのアナログテープに一度録音され、
プロツールスに移してのポスト作業というスタイルは前作と同じで、暖かく親密な音世界が実現された。
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1980年4月5日からスタートしたGREATな体験。それは見事に現在に至るまで続いています。

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