アート・ワーク・オブ・ヒプノシス

自身のキャラクターや、肝心要である歌(詞、メッセージ)と演奏によるサウンド。
これがロック・アーティストの2大要素なのは間違いないが、僕はここにもうひとつ加えたい。
それは作品のビジュアルである。
シングルでもアルバムでもいい。ジャケットその他のデザインも重要な要素だと思うのだ。

ロックを聴き始めた時期はハードな音が中心ではあったが、
あまりジャンル(あくまでもロックの中の)に拘らないでアーティストやバンドを選んできたので、
知識も何も無かったが、所謂プログレッシヴ・ロックのアーティストも良く聴いていた。
その中で大好きだったのがピンク・フロイドである。
当然ピンク・フロイドの出す音が僕を捉えたのだが、彼らのレコードはジャケットが魅力的だった。
特に70年代に発表された作品は、何とも独特で想像力を刺激するものばかりだ。
この、一連のフロイド作品を手がけていた代表的なデザイン・チームがヒプノシスである。

93年に、宝島社から「アート・ワーク・オブ・ヒプノシス」という、
彼ら自身がその作品を解説するという本が出た。
冒頭の挨拶の言葉を引用する。

  この本ではぼくらの仕事をおおまかなテーマで分類し、アルファベット順に並べてある。
  テーマは特定のイメージを指すこともあれば、個々の作品を指すこともある。
  場合によってはぼくらの過去といった、ぐっと普遍的なものだったりもする。
  といっても分類はけっこういい加減で、
  雑多な作品が妙なところでひと括りにされていることも多い…。

という本である。
図版はすべてカラーであり、見ているだけでも本当に楽しい。
そのうえに、ヒプノシス自身による製作過程が語られているのだからたまらない。
全ロック・ファンは必読だ。
しかし、今でも入手できるのかな?

その挙げられているテーマの1部と、そこで取り上げられている主な作品を少々紹介する。

★ANIMALS[動物] ATOM HEART MOTHER/PINK FLOYD
牛が草原に1匹、こちらを振り返っているだけという有名なジャケットである。
これを見て「何だこれ?」と思わない人はいないであろう強烈なインパクトを持つジャケットだと思う。

★BALLS[球体] VENUS AND MARS/WINGS
火星と木星を表したのだろうが、ただ赤と黄の球体がふたつ並んでいるだけである。
しかし、センスの良さが感じられるジャケットで、
実際に英ミュージック・ウィーク誌のアルバム・カヴァー・オブ・ザ・イヤーを受賞した。

★BUILDINGS[建物] GOING FOR THE ONE/YES
イエスのアルバム・ジャケットと言えばロジャー・ディーンによるカヴァーであるが、
そのライバルとも言えるヒプノシスが手がけたジャケットがこれである。
プログレのジャケット・デザイン2大巨頭の作品が楽しめるのはイエスだけかも。

★PORTRAITS[ポートレイト] MADCAP LAUGHS/SYD BARRETT
このジャケットはバレットの自室で撮影しただけとの事。
部屋の床がストライプなのは、彼自身が撮影のために、事前に赤とブルーにペイントしていたそうである。

★STORIES[ストーリー] LAMB LIES DOWN ON BROADWAY/GENESIS
ジェネシスが作ったストーリーからいくつかの場面を選んで写真で再現し、
時系列に沿らず連続マンガのように並べたそうだ。素晴らしいジャケットだと思う。

とまぁ、こんな調子である。そのレコードを聴いたことがなくてものめり込むことは必至だ。
興味深い話が満載なのだが、その中でも印象的なのがこれ。
ローリング・ストーンズの「GOATS HEAD SOUP」のアイディアがキャンセルされたというエピソードだ。
フォト・セッション用に広大なスタジオを予約し、山積みのビールとソフト・ドリンクをバンドのために、
そしてキース用にはジャック・ダニエルズを用意して彼らの到着を待つ。
しかし遅れに遅れ、約束の時間から3時間後にストーンズ到着。
そのうえ、キースが撮影は嫌だとごね、ミックと口論。
撮影自体は何とかこなしたが、言うまでもなくストーンズ側からキャンセルされたという話だ。
実現していれば、いったいどんなデザインになったのか。残念な話である。

テーマ別になってはいるのだが、アルバム単体で解説されているものも何枚かある。
この本の最後を飾っているのもそんな1枚だ。
それはWISH YOU WERE HERE/PINK FLOYDである。
このデザインの魅力を伝えるには、実際にアナログ・レコードを手にとってもらうしか無いのであるが、
作品としてのレコード・ジャケットの究極の形といっていいかもしれない。
ヒプノシスの作品としても、最高傑作といえるものだろう。

さて、この本と似たようなものでは、
ミュージック・マガジン社から「100ベスト・アルバム・カヴァーズ」という研究本が出ている。
こちらはヒプノシスのメンバーが自身だけでなく他の有名なジャケットについて解説しているので必見だ。
例えばアンディ・ウォーホルがストーンズの「STICKY FINGERS」をデザインしたいきさつとは?
ブラインド・フェイス「BLIND FAITH」のモデルがギャラの代わりに欲しかったものは?
というように、誰でも読んでみたいと思うような話がたくさん載っている。

最後に、数あるロックのレコード・ジャケットで1枚だけ僕が選ぶとしたら…で締めてみたい。
好きな、キレイな、豪華な、カッコイイ…等と視点によっても違ってくるが、
あえてそれら全てをおさえてしまうであろう1枚を挙げたいと思う。
これしか、無い。

Unfinished Music No.1 Two Virgins. Yoko Ono/John Lennon -1968-


ジョージ ハーディ,ヒプノシス
JICC出版局
発売日:1993-09

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1980年4月5日からスタートしたGREATな体験。それは見事に現在に至るまで続いています。

" 君の手を握りたいんだ 君の手を握りしめたいんだ 君の手を握りしめていたいんだ そう いつかのメロディーに聞いた "

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