今年はストリート・スライダーズのデビュー35周年。
その企画としてJOY-POPSの全国ツアーが発表された。
バンドでやらないところが感慨深く、かつ、意表の付かれ方に驚きと心地よさと、
さらにファンならではのそこにあるはずであろう深い意味を勝手に感じながら、
ロックし、ロールする二人に、さぁ、どこへ会いにいこうか…と考えた。
本当にたまたまだったのだが、発表直前に『LAST LIVE』の映像を観ていた。
「のら犬にさえなれない」演奏直後の印象的なHARRYの表情。
彼が見つめていた武道館の客席の向こう側に何があったのかはわからない。
ここから20年近い年月が経つ。
隣でギターを弾くのは武道館と同じく土屋公平である。
その音を聴きながら2018年のHARRYが客席の先に何を見るのか。

ツアーは春の終わりに始まり、そのまま夏に向かって突っ走ってゆく。
その間、各地でHARRYが見続けてくる最後の景色の中にいたいと思った。
決まった。
二人で駆け抜けるツアー最終日の一択で臨むことにした。
JOY-POPSといえども、こちらから取りに行かなければ詳しい情報は入ってこない。
おかげでツアー中も、僕自身はとても静かな印象を持っていたけれど、
たまに目にし、耳にした何かやモノたちからは、それがわずかだとしても、
体験したファンの思い入れの強さをヒシヒシと感じることができたし、
喜びや嬉しさが日本中で噛み締められているような空気感はかえって感動的で、
間違いなくJOY-POPSは熱狂的に迎えられているであろうことを確信した。
しかし、会いに行けるといっても最終日。
待つ時間はさすがに長い。
事前にセット・リストを調べ、プレイリストを作っての予習も考えたし、
実際、そうしようと思っていたが、二人と共に僕も存分に楽しむには、
やはり真っ新で臨むしかないな…との結論に達した。
そして7月8日。
ついに当日を迎えた。

二人がステージに登場した瞬間、自分がどんな思いを抱くのか。
それ自体を僕自身も期待していたのだが、
不思議と18年の月日が無かったかのように、
自然に受け止められていた自分に驚いた。
しかし、今になって思えば、それほど二人が自然だったのだと思う。
これこそが最終日にしたことの効果…と言うのも変な表現だが、
たぶんツアーを続けてきた二人と、それを待っていた自分とに流れた時間は、
前述した、僕が感じてきた全国のファンの思い入れと共に、
初めて出会う前に持つ期待・希望・忍耐のような、
目に見えないものだけれどファンとして持つ大きく重要な要素を、
その出会いの場に添うように、うまく溶かしてくれていたのだろう。
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「7th Ave.Rock」で始まっても、
「Angel Duster」が歌われても、
それを当たり前のように聴いて楽しんでいた自分だったが、
HARRYと公平がエレキを手にして演奏されたその曲だけは違った。
公平のSGから放たれたフレーズだけではわからなかったが、
そこにHARRYがテレキャスターで突っ込んだ瞬間にアタマとココロが沸騰した。
絡むというよりも、ぶつかり飛んでくる二本のギターは、
空気の振動ではなく塊となっていた。
さらにHARRYのアクションとヴォーカルも含め、
何かが18年の月日を超え、かつ積み重なり、二人に降りてきていた。
もちろんスライダーズのライヴでも体験済みの曲だが、
こんなに興奮し、ヤバさを感じ、かっこいいと思った「カメレオン」は初めてだ。
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中盤で披露されたお互いの新曲。
そのうち公平の曲を紹介したHARRYのコメント。
サム&デイヴや、ジョンとポールみたいに、
アタマから通して二人でハモるんだぜ
サム&デイヴみたいに…ではなく、
ジョンとポールみたいに…をそこに加えるHARRYがイカシてた。
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HARRYはこんなことを言っていた。
JOY-POPSはロックンロールバンドじゃないけど…
何をもってのことなのかは図りかねるが、
数々のスライダーズ・ナンバーはもちろん、
そのリフやリズムからグラムな雰囲気も漂ったHARRYの新曲も含め、
あの夜に僕が聴いたのはロックン・ロールだ。
HARRYの発言が、もし、バンドとしての編成を指してのそれだとしたら…。
何の問題もない。
あの日、会場にいたお客さん(全員とは言わないが、それに近い数だけの人)は、
意識的・無意識的に心の中でリズム隊が加わった音を鳴らしていたと思うからだ。
これはファンの思いや想いだけでそうなっていたのではないと思う。
JOY-POPSのライヴがそうしたのである。
そうした音をJOY-POPSが出していたのである。
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ライヴ中、特に歌詞を追いながら聴いていたわけではないが、
その曲の、その歌詞だけがまるで空中に浮かび上がるかのように、
スーッと僕の中に入ってきた。
二人がスライダーズの曲を演奏するのは18年ぶり。
そんなライヴで " いつもそばにいたおまえが見えなかった " とHARRYは歌う。
この歌詞がものすごく響いた。
曲のタイトルは「Friends」。
" それぞれの夜は過ぎてゆく " や " ここがおまえと出会った場所 " とも歌われる。
短くはない年月が経過していることをあらためて知った。

二人がステージに登場した瞬間から終演まで、
様々な思いや想いが駆け巡ったが、きっとこれからもじわじわと来るだろう。
2時間を通して会場には笑顔が溢れていて本当に楽しかった。
あらゆる意味で実にロック的な時間だったにもかかわらず、
僕の中に残ったのは二人の笑顔に象徴される楽しさだった。
HARRYと公平にはこの言葉しかない。
ありがとう。
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