文春トークライブ第12回 浜田真理子「昭和」をうたう。 紀尾井ホール 2016.12.20

会場の紀尾井ホールはクラシック音楽専用ということだし、
開演中も客電はほぼ点いたままだし、
歌と演奏の合間には佐藤剛さんのMCで解説が入るしと、
通常のコンサートとは趣が違う構成。
さらに浜田真理子のファンとしては、事前配布のパンフを見たら、
そこで歌われるのはライヴではお馴染みの曲だったことに加え、
マイラストソングで取り上げられていたものも多くあったわけで、
文字だけで予想すれば良くも悪くも新鮮味が薄れてしまうように感じられた。
はたして…。

一曲目の「みんな夢の中」が歌われた瞬間、
まるで初めて聴いた曲のような声と音とメロディがあった。
同じく、これまで何度も聴いている「街の灯り」や「一本の鉛筆」も新曲のように響く。
新鮮味が薄れるどころか真逆。惚れぼれする。
そりゃそうだ。
歌っているのは浜田真理子なのだから。

浜田真理子の歌を形容する、たとえば " 美しい " のような言葉や単語はすべて僕にはもどかしい。
当てはまらないからということでは決してない。
僕にはそれらを超える他の言葉があるとしか思えず、しかしそんな言葉は無いからである。

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オフィシャルのインフォから引用。

  忘れ得ぬ昭和のスタンダード・ソング、知られざる名曲、
  懐かしの哀歌(エレジー)をしみじみと、哀切に歌い上げます

佐藤剛さんのMCでは専門的知識を必要とする解説もあったけれど、
中心にあったのは昭和の名曲を現代に蘇らせて伝え、
後世に正しく残していきたいという、実にシンプルなものだったと想像する。
そのためには昭和のうたの素晴らしさを、素晴らしいまま、
素晴らしい曲としてうたえる歌手…浜田真理子しかいないということだろう。
異論は微塵もない。

冒頭に書いた通り、通常のコンサートの雰囲気ではなかったが、
常に中心にあったのは " うた " だった。
そこには歌詞とメロディと音と声、
そして聴いているお客さんの数だけの " うた " 、
時代も世代も超えた昭和の " うた " が主役だった。

歌の力。
そして、歌う力。
これに尽きる。
浜田真理子は凄い。


P.S.
カヴァーの中で唯一歌われたオリジナル曲は「のこされし者のうた」。
過去に何度もこの曲で泣かされてきたが、
この夜はこれまでとは違う個人的な想いを抱いて聴いてしまい、
途中で落涙した。泣ける浜田真理子を久々に堪能。

それにしても今夜、初めて浜田真理子を聴いた人は、
昭和をうたうというテーマも楽しめたと思うけれど、
この唯一のオリジナルである「のこされし者のうた」は強烈だっただろう。
この一曲に心を奪われ、持って行かれちゃった人も少なくなかったんじゃないかと思う。
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浜田真理子 『代官山 晴れたら空に豆まいて 10周年記念』 ハマダと夜と音楽と 2016.10.28

開演前のステージにはいつものようにピアノが一台。
しかし、何かが違う…と思ったら、その理由はセットされていたマイクだった。
久保田真琴さん所有というそれの詳細は不明だが、
ちょっと調べてみたところ、もしかしたらドイツのノイマン製のマイク?
真理子さんのMCによるとヴィンテージもの…もしくは現行版だろう。
とにかくルックスからして最高で、ステージ上のそこだけが、
何だかレコーディング・スタジオに見えたりもしてしまった。

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そのマイクで歌う姿に慣れない違和感を感じたが、
それはライヴが始まってから数十秒のあいだだけのことで、
以前から使用しているかのように真理子さんに馴染んでいた。
さらに言えば、" うたう " ということがこれだけ似合う人もいないと感じているので、
その意味ではこのマイクでうたう姿はかっこ良かった。

何度もライヴで取り上げられてきた浅川マキの「ブルー・スピリット・ブルース」。
前半はタメを効かせ中盤からは流すなど、そのピアノが饒舌で最高だった。
オリジナルではないそうだが、とても真理子さんらしい「何もないラヴ・ソング」。
♪なにもない というリフレインが素敵で、この日の曲で最も印象的だったかも。
僕が初めて手にした浜田真理子のアルバムが『夜も昼も』。
その収録曲すべてに思い入れがあるので、久しぶりに聴けた「旅路」も嬉しかった。
この辺のオリジナル曲をもっとライヴで歌ってほしいものだ。

さて、彼女のライヴの特徴と魅力のひとつは、
その歌の世界とMCの落差から生まれる独特の雰囲気だと思う。
笑わせるMCの比重も高く…というか、MCはその路線のほうが多いほどだが、
ひとたび彼女が歌えば、その世界に引き込まれる強力な吸引力が、
曲にも歌詞にも、そしてそれを表現する歌にもある。
そこに生まれるお客さんの数だけの想いが作り上げる空気。
これこそがハマダマリコのライヴであり、僕が惹かれる点でもある。

しかし、今回はこうした面はほとんど無かったような気がする。
そこにあったのは、単に歌い、楽しむという雰囲気。
例えば、「ミシン」でさえ、演奏中に合いの手を入れられそうだったといえば、
それがわかってもらえるだろうか。

東京でのワンマン。
時期的なことを考えれば近いうちに発表される新作アルバムのインフォメーションも兼ね、
新曲を中心にした構成が定石だろう。
しかしそれ的な色もほとんどなく、歌いたい歌を、歌いたいように歌っている印象だった。
これは当たり前のようだが、実はあまり体験できない。
どんなライヴにも必ず何かしらのテーマから考えられた構成があるだろうから、
本能に近いナチュラルな気持ちのまま歌うだけをお客さんに提示することは、
まず、あり得ないに近いだろう。

さらに言えば、そのライヴが独り善がりや自己満足にならず、
お客さんに観て聴かせ、色々な意味で参加させることにも成功していた。
どんなライヴにもある…いや、無ければならないステージと客席の間にある敷居。
それが低かった。
無かったと言ってもいいほど、低かった。
彼女の人柄のおかげと言ってしまえば簡単だが、意識してのことだったのかもしれない。

これだけ開放的な浜田真理子のライヴ。
新たな面を見た気がする。

浜田真理子・畠山美由紀 コンサート ~Early Autumn~ 島根県民会館 2016.9.4

例年よりも早い時期の松江コンサート。
Early Autumnと題されていても、まだまだ暑い。
ただ、水の都に吹く風は少しだけ秋の気配を感じる。
心配された台風も大きな影響はなかった。
この季節に訪れたのは初めてだったが、
結果として、ライヴ共々青空ものぞいた松江を楽しむことができた。

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今回は畠山美由紀さんとの共演。
しかし、既に二人のセッションは渋谷クアトロで体験済みだったので、
僕の関心はただひとつだけ。
それは浜田真理子、新作のレコーディングを終えた直後のステージという点だ。

ライヴの構成は、第一部が浜田真理子と斎藤潔(b)。
第二部が畠山美由紀と小池龍平(g)。
そしてアンコールは4人のセッションだった。

いきなり、真理子さんの新曲からスタート。
後から発表されたセット・リストから「彼方へ」というタイトルと知った。
見ようとすれば景色が 語ろうとすれば言葉が邪魔になる…という歌詞が印象的。
この独特の世界観を持つフレーズから僕が連想したのは、
あなたには顔がない わたしには声がないと歌われる「森へ行きましょう」だった。
ただ、「森へ行きましょう」はその歌詞に見合った曲調とメロディであり、
聴いた人がどこか知らないところへ連れて行かれそうな曲だった。
しかし「彼方へ」は違う。例えば既発曲で言えば、
「はためいて」や「遠い場所から」のように透き通った美しさを感じさせてくれる曲だ。
一聴すれば心地よいが、だからこそ引っかかる言葉があると後から迫ってくる。
間違いなく新作には入るだろう。作品化されたものを早く聴いてみたい。
2曲目に披露されたのはインストだったが、これもMCによると収録されるようだ。
ハマダマリコ的テイストをじゅうぶん味わえるであろうピアノとアレンジが楽しみだ。

さて、新作を匂わせてくれたのはここまで。
もちろん他にも作品化されていない曲が歌われたし、その中には新作に入る曲もあるだろう。
でも、それらを僕はライヴで何度か聴いていたこともあったから、
この日の個人的期待からはどうしても外れてしまっていた。
ただ、これまでライヴで披露されてきた新曲たちをCDとして聴きたい希望はある。
いや、あり過ぎる。あれが聴きたい、これも聴きたいとキリが無い。
とにかく新作が待ち遠しい。

畠山さんのパートは、クアトロでも思ったが、
小池さんの素晴らしいギターとコーラスのサポートが効いていた。
ホールということもあり特にギターの響きが美しく、ヴォーカルとの相性もバッチリ。
締めくくりで歌われた「わが美しき故郷よ」と「歌で逢いましょう」が沁みた。

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この二人のセッションを想像するのは難しい。
何てったってクアトロでは「幸せハッピー」というまったく予想外の曲が取り上げられたので、
この日も色々な意味で期待と不安(笑)を、あえて楽しみにしていた。
はたして…「探偵物語」と「思秋期」という、やはり予想外の曲。
しかし二人にはハマり過ぎていた。
斎藤さんのベースと小池さんのギターが真理子さんのピアノに加わることで、
音もシンプルながら分厚く、心地よく、カッコよく、美しくと、聴きごたえがあった。
歌う人によっては、カラオケになるパターンもあるだろうが、
この名曲を名曲のまま、名曲として提示できるステージの4人が素晴らしかった。

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それにしても、あらためて真理子さんの松江ライヴはいいなぁ。
今後も開催される限り、足を運びたいと思う。

QUATTRO MIRAGE EXTRA ~ROLL OVER 60~ 浜田真理子×畠山美由紀 渋谷クラブクアトロ 2016.6.22

僕が観ていない最近のライヴでは、何やらアルバム制作の話題が出ているような…。
こんな情報をキャッチしたことで、
やはり最近のライヴで発表されている新曲の素晴らしさを感じていたこともあり、
大きな期待を持ってクアトロに向かった。

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一部は畠山美由紀さん。
小池龍平さんのギターとコーラス。
そして織原良次さんのフレットレス・ベースのトリオ編成。
ギターがバックに回り、ベースがリードをとるという演奏は新鮮で、
そのアレンジで聴く真理子さんの「あなたへ」のカヴァーは聴きごたえがあった。
畠山さんは『歌で逢いましょう』のレコ発イベントやARABAKI ROCK FESで観ている。
それぞれが違った音を聴かせてくれていた。
かなり広い音楽的なふり幅を持っているんだと思う。

さて、二部はいよいよ真理子さん。
何の演出もなくステージに登場し、ピアノに座る。
こちらもリラックスして演奏が始まるのを待つ。

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オープニングのピアノだけでは何の曲が歌われるのかわからない。
しかし、突然それが「骨董屋」のイントロになる。
その場が一瞬のうちにハマダマリコの世界に変わる。
真理子さんのライヴでは何度か体験してきたこうした瞬間の、実に何とも言えないカッコよさ。
ステージ上で真理子さんが浮かべる笑顔とは違う理由で僕も笑顔になるのがわかる。

さて、今年になってから僕が強く感じているように、既発曲はかなりスローなテンポで歌われる。
この日は「骨董屋」と「ミシン」にこれがとても効いていて、
特に後者の終盤にスピードがあがるアレンジにバッチリとはまっていた。

「Guess who I saw today」という曲が素敵だった。
冒頭で真理子さんが歌詞の和訳をピアノに乗せて語る。
立ち寄ったカフェで見たカップルについて夫(?)に語るという内容で、
最後に " 私が見た(会った)のは誰だと思う? あなたよ " で終わるのだが、
語るというよりもメロディがないだけで歌われていたと言っていい。
それにしてもここでの表現力はどうだ。
そのストーリーも相まって、最後の " あなたよ " はゾクゾクしてしまった。
真理子さん、朗読も絶対にイケルと思うな。

ライヴは僕が期待していた内容…期待と言うのは新曲中心というライヴだったが、
そんなプログラムではなかった。ただ、ワンマンではなかったし、
クアトロ店長の還暦祝いと言うテーマ上、これは致し方なかっただろう。
しかし、本編最後にふたつの新曲を持ってきたところは意志だったはずだ。
これまで歌われてきた新曲を思い浮かべ、それを単に並べただけでも、
既に僕の中では傑作になるのが間違いない新作を、期待して待ちたいと思う。

ここまででも二人に十分に楽しませてもらったのだが、
アンコールでは予想していなかった展開が飛び出した。
最後に歌われたのは、何と坂本冬美の「幸せハッピー」。
僕にとっては忌野清志郎の作詞、細野晴臣の作曲、
そして坂本冬美が歌の、HIS名義の名曲だ。
その曲を、浜田真理子と畠山美由紀が目の前で歌うのだ。

 幸せハッピー
 それこそがすべて
 どうだ どうよ
 いつも 今日も
 幸せハッピー

まさに幸せでハッピー。
楽しく、笑顔で終わる感動的な夜だった。

マイ・ラスト・ソング 歌謡曲が街を照らした時代 浜田真理子(歌・ピアノ) 小泉今日子(朗読) 三越劇場 2016.5.9

東京公演は4年ぶりとのことですが、
開催された年のうち、2010年以外は足を運んでいるからか、
久しぶりという気はしませんでした。
ただ、この演目に対しての僕は、毎回、初めて来たような気持ちで臨みます。

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例えば、好きなレコードを何度も聴くこと。
好きな映画を何度も観て、好きな本を繰り返し読むこと。
わかっていても、あるフレーズで、ある歌詞で、ある音で、感動します。
知っていても、あるシーンで、あるセリフで、ある言葉で、描かれる世界に感動します。
毎回、毎回、です。

曲や映画、本は、いつだってそのままでそこに存在しますが、
それを聴き、観て、読む自分は、聴き続けて観続けて読み続けて成長します。
その経過した時間の分だけ、確実に何かが作品にプラスされ、
そのときの自分がそれに触れることで、プラスされた何かを受け取ります。
受け取ったものは何か?
言葉や文字にできるものもあれば、アタマや心の中だけに生まれるものもあります。
100人いたら100通りであり、" 何か " の定義は決められません。
ただ、こうしたことを繰り返し、人は道を進んでいくのでしょう。

マイ・ラスト・ソングから受ける感動も、これらと似ています。
その都度で設定されるテーマで色付けがされますが、
2008年の第1回から柱となるプログラムは不動です。
しかし、それでも、またしても久世光彦の言葉に、
小泉今日子の声に、そして浜田真理子の歌に感動してしまいます。
繰り返し観てきたことによって増してきた舞台と自分、それぞれの深みや想いが、
同じ演目を毎回違う景色に変えてくれるのです。

真理子さんはエッセイでこう書いています。

  ラストソングを考えるのは生きているからだ
  自らの人生を振り返り、そして、
  これからをどんな風に生きていこうかと考えることでもある

マイ・ラスト・ソングと一緒に生きて、
共に時間を重ねていることの喜びを感じます。

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浜田真理子入門 3 真理子の部屋~中級編 うどん屋の2階 2016.3.20

ここでのライヴは3回目になりますが、
誰もが思い浮かべられる通常のライヴハウスやホールではありません。
更に、うどん屋の2階と言う名の通り、ドリンクではなくうどんが付いてきます。
よって、その独特な雰囲気に慣れるまで時間がかかると思います。
しかし、こんな会場であっても、真理子さんはいつものステージを演ります。
ピアノの前に座り、イントロを弾き、歌い出せば、
もうそこはハマダマリコ的な世界に満たされるのです。
そりゃそうです。
まだ外が明るい時間。
ステージ後方の大きな窓からその外の景色が見える。
そんなライヴっぽくない環境の中であっても、
歌いだされたのが「早く抱いて」なのだから。

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今回は “ 中級編 “ と題されていました。
過去と違っていたのはオープニングアクトに胡池マキコさんが出演したことと、
アンコールで二人のセッションがあったことです。
これ以外は特に中級だから…と言えるものはありません。
しかし、終わってみれば初級ではなかったのが明らかでした。

暗くてヘヴィ(笑)な真理子さんの真骨頂的新曲「静寂(しじま)」。
自分を浄化させる為にということもあって…と書いた曲が聴く人をも浄化させている「きらめくひと」。
日が暮れて、夜空に浮かぶキレイな月を見上げながら聴いた「月の記憶」。
真理子さんが付けるハーモニーが印象的だった胡池マキコさんとの「あなたへ」。
まさにここでしか体験できないものが多く、中級と呼ぶに相応しい内容だったと思います。

ところで、最近のレパートリーのひとつ、天地真理の「ひとりじゃないの」。
真理子さんはみんなで歌う曲として演奏しますし、
お客さんの年齢層から実際にサビを口ずさむ人も多く、
ある種、ライヴでのハイライト的なシーンでもあったりするのですが、
笑ってひと息的な雰囲気に隠されがちな音楽面を無視してはいけません。
この王道的な昭和歌謡曲をタメの効いたブルース調のピアノで歌うアレンジは、
かなりカッコイイものです。
単に “ 楽しかったー “ で終わらせてはもったいない演奏です。
これだけは言っておきたいと思います。

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さて、真理子さんが取り上げることが多い「流れ星」という曲があります。
里花さんという方のカヴァーだそうですが、ここで歌われるこんな歌詞があります。

 君は知らない 君がどんなに美しいかを
 君は知らない 君がどんなに素晴らしいかを 
 君は知らない 君の中にある輝きを

真理子さんの音楽はもっと世の中に知られるべきだと常々思っている僕としては、
もし、僕に説得力ある歌唱力と演奏力があるのならば、
ピアノの弾き語りでこのフレーズの部分だけでも真理子さんに向けて歌いたい。
あらためてそんな風に思った夜でもありました。
だって美しく、素晴らしく、輝いているんだもの。

HOBO CONNECTION 鍵盤男女 リクオ、浜田真理子、川村結花 南青山MANDALA 2016.3.17

ライヴを終えた真理子さんのツイート。

 “ ああ音楽をやっていてよかったなあと思えた夜でした “

同じくライヴを観た後の僕のツイート。

 “ 音楽が好きでよかったと思わせてくれた夜 “

どちらもよく目にする表現ですし、最近は僕自身もよく思うことでもあります。
しかし、この誰もが簡単に使えそうな言葉をあらためて考えてみると、
前者は音楽をやり続けてきた人、
後者は音楽を聴き続けてきた人にしか言えないことではないか…と、
ふと、あの夜はこんな風に感じました。

例えば、僕が洋楽に興味を持ったばかりの中学生時代はもちろん、
RCサクセションに夢中だった高校生の頃でさえ、
“ 音楽が好きでよかった “ という思いや表現は、
おそらくしなかったし、できなかったと思います。
音楽を聴き続けてきた40年というとてつもない長い時間。
これを経てきたからこその思いからの言葉は、
自然と口から出たからこそ、決して軽いものではなく、
かつ、それはとても素敵でうれしいことでもある…というのを、
あの夜の僕は知ったのでしょう。
おかげで、更なる強く深い余韻に浸ることができました。

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出演者各々のソロ・パートよりも、やはりセッションが楽しみでした。
そしてそれは期待通りであり、更には期待以上のものでした。

僕はこれまで真理子さんの音楽をよい意味でセッション向きではないと感じてきました。
著書を読むと、自身もセッションには向かないであろう自分が持つ独特の間を意識しているようですし、
実際に、過去に僕が観た他人との共演もセッションという色あいは強くはなく、
もちろんその場は楽しめたとはいえ、ある種の物足りなさを感じたのも事実です。
それが、今回は一変していました。

まずは二人で演った「Mariko’s Blues」。
真理子さんのピアノとリクオのキーボードが、
まるでひとつになったかのように組んず解れつブルースしていました。
そしていつもの真理子ワールドで展開する「ミシン」。
リクオがシンプルなフレーズを入れることで、新鮮かつあやしさが満ちた演奏になり、
これまで聴いたことが無い「ミシン」になっていました。
そして何よりもこのセッションが素晴らしかったのは、真理子さんがナチュラルだったことです。
いつもとは勝手が違うライヴだったことは間違いないはずなのに、
とても自然に、楽しんでいるように見えましたし、
出てくる音も自然で楽しく、さらにカッコイイものでした。
だから、見ている僕自身も、自然に楽しくカッコよく感じていました。
ということは、自然で楽しくカッコイイ音楽だったことになります。

終盤では鍵盤を弾くリクオ、川村結花に挟まれて、
真理子さんがハンドマイクで歌うというシーンがありましたが、
おかげでここではヴォーカルがクッキリと引き立つことになり、
伸びやかで、透明で、しなやかなのに強く太い声を、
MANDALAという狭い空間でじゅうぶんに堪能できました。

思えば、リニューアル前の大阪フェスティバルホールに響くこの声に魅せられたのが、
僕と真理子さんの決定的出会いのきっかけでした。
この夜のハンドマイクは結果として、
シンガーとしての真理子さんの凄さをあらためて感じさせてくれました。

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真理子さんが参加したHOBO CONNECTIONは東京の他に、大阪、名古屋の3回。
そのすべてを体験できませんでしたが、今、この3回を終えて伝え聞く話から感じるのは、
新たな真理子さんが引き出されるものだったのかもしれないということです。
もしかしたら僕や僕たちは、
音楽家としてのハマダマリコのターニング・ポイントに立ち会えていたのかもしれません。

「浜田真理子 ふたつの物語」晴れたら空に豆まいて 2016.1.28~1.29

第一夜は真理子さんのソロ。
第二夜はふちがみとふなとさんとのツーマン。
晴れ豆での2daysは、真理子さんのソロ、ふちがみとふなとさんのパート、
そしてふちがみとふなととまりこセッションが2日で体験できるという贅沢。
そのすべてが聴きごたえがあるものでした。

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1日目。
僕にとっての2016年の浜田真理子は「森へ行きましょう」で始まりました。
歌いだされた瞬間から感じましたが、
これまでよりもスローなテンポでオリジナルが披露されます。
最初はたまたまなのかとも思いましたが、間違いなくテンポがゆったりでした。
これは2日目に至るまで貫かれていましたから、何かしら理由があってのことだと思います。
しかし、このことで楽曲の深みが底なしになっていました。

歌詞の最後をわざとぼやかすヴォーカル・スタイル。
かすれて消えてゆくフレーズを聴き逃すまいと、
聴き手は耳だけでなく身体と心を向けます。
これにより真理子さんの世界に引き込まれる…というか、
聴き手のほうから中に入っていくというのが真理子さんの魅力のひとつです。
これが本当に快感で、いちどこのことを体験したら抜け出すことができません。

もうひとつ、どんな内容の曲であっても浮かぶ、あの独特の笑顔です。
不敵にも見えるし、歌うことが楽しいという喜びにも見えます。
人間の持つ、あらゆる感情が詰まったような笑顔。
これも真理子さんのライヴには欠かせない魅力です。

これらとスローなテンポの相性は抜群でした。
おかげでこれまで聴きなれていた「骨董屋」「ミシン」も新鮮で、
歌われるストーリーも初めて聴いたように生まれ変わった印象です。
まちがいなく深みが増し、名曲度もあがっていました。
こうしたことで素晴らしい初日に感動しましたが、
2日目の密度がまた尋常ではありませんでした。

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晴れ豆は、客席の位置によって照明の効果により真理子さんが、
ビートルズのセカンド・アルバム…いわゆるハーフ・シャドウになります。
この効果が2日目のセット・リストには恐ろしいくらいハマっていました。
特に「うたかた」「しゃれこうべと大砲」と続いたオープニングは最高で、
暗さと強さ、光と闇が同居したかのような世界観の説得力と吸引力。
目と耳が釘付けで、久しぶりに体験する最上級のハマダマリコでした。
2日目の構成ではソロは第一部のみでしたが、フル・ライヴに近い内容で、
これだけでお釣りがくるステージでした。

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アンコールでのふちがみとふなととまりこセッションにも驚かされました。
アバの「チキチータ」というまったくアタマに浮かばない選曲と、
さらにそれが何とも素晴らしい出来だったことに更に驚かされました。
アバと浜田真理子とふちがみとふなとを足して出てきた音は、
まるで初めて聴かされる音楽のようでした。
足して一。
昨年の同じ時期に、同じここ晴れ豆で真理子さんが放ったこのフレーズ。
あぁ、まさに足して一な音楽だったなぁと、今、これを思い出しています。

ラストを締めくくったのは「純愛」。
二人のハーモニーにより、聴いたことがない「純愛」になっていました。
真理子さんは " 一緒に歌いましょうか " と言っていましたが、
あんな「純愛」を一緒に歌えるわけがないじゃないですか。

この2日間を体験することで、
やっと僕の2016年のスイッチが入ったように思います。
素晴らしい音楽で始められることができた今年は、
今後もそんな素晴らしい音楽が待っていてくれるように感じます。
そんな風に思わせてくれた真理子さんに感謝。

浜田真理子 Mariko Live ~歌ったことのない歌~高円寺JIROKICHI 2015.11.24

終盤で " 今日は私のカラオケにつきあってくれて " と笑わせていましたが、
歌ったことのない歌と題されたこの日のライヴは、
いつものMCは影をひそめ、曲の紹介すらなく淡々と進行していく構成。
さらに真理子さんのことなので、例え知っている曲でもイントロではわかりません。
おかげで何が飛び出すかと、僕は変に緊張感を持って観ることになりましたが、
MCが無い分、音楽がダイレクトに伝わるので真理子さんのライヴとしては新鮮でしたし、
結果として、僕自身は大歓迎のスタイルでした。
そうそう、緊張感を持って…と書きましたが、いわゆる息が詰まるようなそれではなく、
あくまでも何が出てくるのかという期待の意味での緊張感だということは記しておきます。

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初出のカヴァー曲を中心に、最近のオリジナル曲が加えられたセット・リスト。
白眉は第一部、中島みゆきの「糸」と天地真理の「ひとりじゃないの」が続いたところです。
♪ なぜ めぐり逢うのかを~ と歌われた瞬間、
何の曲かを理解しましたが、それがどういうことなのかは理解できないという心地よい混乱。
ハッキリ「糸」とわかった後は、聴きほれるしかありませんでした。
今では結婚式の定番として世間に受け入れられている曲ですが、
高円寺の狭い地下で聴いたのは、単純明快なラヴ・ソングとしての「糸」でした。
しかし、これこそが浜田真理子ライヴの醍醐味!
よく知られている曲であっても、ピアノと歌で知らない色が塗られることで、
少なくとも僕にとっては、まったく別の曲のように提示されるのです。

  ♪ 縦の糸はあなた 横の糸は私
    逢うべき糸に 出逢えることを
    人は仕合わせと呼びます

色々に解釈できる大きな名曲ですが、
これを純度が高いラヴ・ソングとして聴くことの贅沢さは最高です。

続く「ひとりじゃないの」が、これまた直球のラヴ・ソングです。

  ♪ ひとりじゃないって すてきなことね ふたりで行くって すてきなことね
    いつまでも どこまでも

このフレーズを聴いたのは何十年ぶりでしょうか。
しかし、シンプルすぎるほどシンプルなのに、誰もが納得できる力強い確信。
聴き手にそう伝えられる真理子さんのピアノと歌がやはり素敵です。

そして一部、二部のラストに歌われた、最近のライヴでは定番となっている新曲、
「きらめくひと」と「サヨナラが降るとき」の何というポジティヴな響き。

" 今 " は一瞬であるからこそ大事に…と思うし、
希望に繋がる " サヨナラ " もあるなぁ…と思います。
聴くたびに前を向かされる新曲たちです。

さて、アンコールに応えて、やはりこの曲が歌われました。
戦後70年の節目から今年は歌い続けているという「教訓 I」です。
ライヴで何度も聴いていますが、どんどん曲を自分に近づけているように思います。
自分の物にしているのではなく、曲を引き寄せているというニュアンス。
だから、凄く力強く聴こえますし、そう感じます。
しかし、決して息苦しいわけでも緊張感に溢れているわけでも無く、
外に開かれていることが素晴らしいのです。

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それにしても高円寺JIROKICHIでのハマダマリコは素晴らしいです。
過去にここで観たライヴは、まずは2013年の~ブルースとロックを歌う日~
RCサクセションの「スローバラード」が歌われたことでも印象的でしたが、
レッド・ツェッペリンの「天国への階段」など、楽しくも聴きごたえのある日でした。
そして2014年の~浅川マキを歌う日~
マキさんの名曲が見事にハマダマリコの曲になって歌われた素敵な夜でした。
これからもJIROKICHIでのステージには期待したいと思います。

浜田真理子コンサート 胸の小箱 島根県民会館 2015.10.24

恒例になった年に一度の松江ライヴに、今年も足を運びました。
この、地元のライヴはゲストを迎えることが多く、今回はphonolite stringsとの共演。
僕自身は、1月にこのセッションを新宿PIT INNで体験していましたが、
耳にする音は、いわゆるライヴハウスのそれとはまったく印象が異なりました。

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ホールで、この編成で聴く浜田真理子は凄かった。
ヴォーカルとストリングスがバッチリのバランスで耳に届きます。
いくら地元ながらのくだけたMCが挟まっても、歌われるのはハマダマリコです。
聴きなれていない音が加わるため、独特の音が更に独特の音に変化し、
切なさや恐ろしさ、そして美しさがリマスターされたように生まれ変わった気がしました。
松江でphonoite stringsを聴いてほしかったとMCで話していましたが、
この試みは大成功であり、最高の音楽として届けられたと思います。

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その共演は、まずは「爪紅のワルツ」。
真理子さんの歌とピアノにコントラバス、
そしてオリジナルのピアニカ・パートはフルートに…のトリオで演奏。
PIT INNで体験済みでしたが、全体像がハッキリと聴きとれたおかげで、
まるで初めて聴いたかのように新鮮でした。
その歌詞のせいで、恐さが強調される曲ですが、恐ろしさはもちろん、
この曲が持つ美しさも倍々増されていたのは言うまでもありません。
特に、間奏でフルートのソロからピアノのソロに移るアレンジです。
この映像がガラッと変わるかのような快感。
音楽の素晴らしさを味わえる瞬間でした。

以前から思っていることですが、誰もが知っているスタンダードであればあるほど、
曲の良さをあらためて感じさせてくれるだけでなく、
それまで見えなかったその曲の魅力が浮かび上がり、味わいが深くなる。
これも浜田真理子のライヴならではの特徴のひとつだと思っています。
その意味では、真理子さんが指でカウントを取ったイントロが、
実にカッコよかった「Close To You」は、そんな魅力にあふれたカヴァーでした。
聴きほれる…というのにピッタリな演奏だったと思います。

ピアノに座らず、ステージ上に置かれた椅子に腰かけ、
演劇的な演出でストリングスをバックに歌った「ミシン」。
間違いなくライヴのハイライトでした。
曲の後で、この椅子について、『マイ・ラスト・ソング』の松江公演で、
小泉今日子が座った椅子であることを笑いを交えて話していましたが、
いやいや、そんなことで帳消しになるような演奏ではありませんでした。
これもいつも思うことですが、MCが無くライヴが進行したら…。
きっと、雰囲気は180度かわるでしょう。
いつか、そんなライヴも体験してみたいと思います。

期待していた浅川マキのカヴァー曲は、
PIT INNで演奏された「夕凪のとき」とはまったく違うタイプの「かもめ」でした。
これがまた…。
言葉や文章で伝えられない演奏で、カッコイイとしか言いようのないものでした。
独特なビートが感じられたことで、これまでの真理子さんからは体験出来なかった音でした。
名演。

ライヴを締めくくったのは、中島みゆきの「時代」。
今はこの大きな曲を取り上げた意図を色々と想像することはできますが、
あの場では、あぁ、いいなぁ、気持ちいいなぁ、嬉しいなぁ…と、
ただただ曲にアタマとココロを任せていただけです。
笑顔で前向きにさせてくれる、ポジティヴな、もの凄い余韻。
素晴らしい曲を素晴らしい演奏で締めくくった、素晴らしいライヴでした。

     **********

さて、ライヴは共演だけで構成されていたわけではなく、
いつもの弾き語りも3曲、披露されています。
オープニングの「十五夜」と「教訓Ⅰ」と、アンコール一発目の「あなたへ」。
特に何がしかのメッセージがあったわけではありません。
しかし、ここから僕が勝手に感じたことがあります。
自身の音楽スタイルや楽曲に対する自信。
今日まで歌ってきた、そして明日からも歌い続けるという意志。
真理子さんの、こんな思いや想いが伝わってきたような気がしました。

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Blue

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1980年4月5日からスタートしたGREATな体験。それは見事に現在に至るまで続いています。

" 君の手を握りたいんだ 君の手を握りしめたいんだ 君の手を握りしめていたいんだ そう いつかのメロディーに聞いた "

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