MARIKO HAMADA LIVE 2017~2019 vol.2 / 浜田真理子 -2020-

昨年11月に発表されたソロ篇に続き、
バンド篇となる『MARIKO HAMADA LIVE 2017~2019 vol.2』。
今の彼女を知るには、バンド編成がまとめられたこの2枚目が最適だろう。
昭和歌謡カヴァー『LOUNGE ROSES』を引っ提げての松江公演音源が柱だが、
vol.1との2枚組として聴けば特に偏りも感じられないし、
2017年『Town Girl Blue』から現在までを網羅した内容になっているのが見事なので、
ぜひ、2枚を通して聴いてほしい。



1曲目の「ミシン」は初めて僕がふれたバンド・ヴァージョン。
当時のブログに記したものを転載する。

     **********

真理子さんのカウントからドラムで始まる「ミシン」なんて、誰が想像しただろうか。

  当初はひとりで演る予定でリハをしていたら、
  そこにバンドのメンバーが入ってきちゃって…。
  
こんな経緯で演ってみたらよかったので、本番でもバンドで…となったらしい。

元々から強烈で独特なパワーを秘めているこの曲は、
これまでも僕の知る限り、色々なアレンジで披露されてきた。
まずはもちろん聴く人の感情を揺さぶるピアノでの弾き語り。
そして作品化されたphonolite stringsとの妖しい演奏。
忘れちゃならない鍵盤と歌が会話するようなリクオとのセッション。
これだけでもバラエティにとんでいることがわかるが、
今回のバンド・アレンジはこうしたことの集大成と言うか、
どんなアレンジでも受け止められる曲だという事を証明したような演奏だった。

そしてこの「ミシン」に象徴されるように、
この夜は新作『NEXT TEARDROP』のレコ発らしい、
実に聴きごたえがあり、
新しいハマダマリコを存分に堪能できるライヴだったのである。

     **********

キーワードは “ 新しい “ だ。
「ミシン」だけでなく、こうした印象はアップデートされながら現在に至っている。
「Since I fell for you」のタメをきかせたヴォーカル。
何度聴いてもうなるしかない「夕陽が泣いている」のかっこいいイントロ。
ジャクソン・ブラウン「孤独なランナー」を思い起こしてしまった「あめつちのテーマ」。
こうした断片的でもバラエティに富む印象を感じることはなかったので、
これだけでも彼女の新しさがわかってもらえるだろうと思う。

さて、アルバムのど真ん中に鎮座ましますこの2曲を推さないわけにはいかない。
「赤色エレジー」と「リリーマルレーン」。

前者を真理子さんの歌で聴いたのは2008年に開催された林静一展でのライヴ
あまりの美しさに言葉を無くし、
拍手しかできないのがもどかしいと感じたのを思い出す。
そのとき以来の、しかも、あがた森魚との共演で聴けたビルボード東京は、
美しさに強さが加わったとでも言いたくなるものだった。
強さと表現したその部分はどんな形容詞に置き換えても当てはまるような気がするが、
あの場の空気も含めたその何かがそのままパッケージされている素晴らしいテイクだ。

一本の映画を観たような気にさせてくれるのが後者だ。
最初のピアノとヴァイオリンからして映像が浮かぶ。
ここだけで何かが始まり、終わっているようなイントロだが、
歌声が聴こえてくると場面が一転する。
声が消える直前に遠くからやってくるのは
歌った真理子さんが空襲の音のように聴こえたというヴァイオリン。
まるで空気を引っ掻くような演奏だが、不思議ときれいに聴こえるのが凄い。
終演後、チャボロ・シュミットチームの歌手が泣きながら、
「リリーマルレーン」が素晴らしかった…と言ってくれたというエピソードからも、
この日のパフォーマンスが観客に与えた力を想像することができるが、
CDの音源でこれだけの世界観なのだ。
その場で聴く演奏はどんなものだったのだろう。
おそらく僕の想像を軽く飛び越えたものであったのだろう。
このテイクが残されて本当によかった。

vol.2についても、再び彼女自身で全曲解説をブログに寄せている。
「わたしたちのうた」の興味深い制作過程など、今回も必読だ。
ぜひ、彼女のセルフ・ライナーノーツを堪能してほしい。

・ライブ盤について その3[ハマダマリコ的こころ]
・ライブ盤について その4[ハマダマリコ的こころ]

僕が今の真理子さんを語る際に、
新しいというキーワードを頻繁に使ってきているが、
確かに新しいのだけれど、それは変わったという意味ではない。

例えば、らせん階段をのぼる人を上から見れば、
同じところを回っているだけにしか見えないが、
しかし横から見れば、その人は確実に上っていることがわかる。
変なたとえかもしれないが、真理子さんの活動はこれに似ているように思うのだ。
同じ場所を歩いているように見えるが、実は高みに向かっている。
『Town Girl Blue』から今日まで、らせん階段を一周し、
これまでよりも高い場所にいるのが今の浜田真理子…という気がしている。
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MARIKO HAMADA LIVE 2017~2019 vol.1 / 浜田真理子 -2019-

『MARIKO HAMADA LIVE 2017・2019 vol.1』。
2014年の『Live. La solitude』以来になるライヴ盤が、
彼女自身で立ちあげたレーベル「カメリアレコーズ」からリリースされた。
vol.1とあるように、来年2月にvol.2が発表される。
おおまかに1枚目はソロ篇、2枚目がバンド篇と区別されていて、
2枚を通して現在の彼女を知ることができるというコンセプトだ。

著者 :
カメリアレコーズ
発売日 : 2019-11-06


『Town Girl Blue』『NEXT TEARDROP』のレコ発に20周年記念。
昭和歌謡カヴァー作『LOUNGE ROSES』を引っ提げての地元松江公演
この他の主要なライヴハウスやフェス出演。
こうした収録会場や公演名を知るだけで期待が高まった作品であり、かつ、
堂々と並ぶ代表曲、そしてカヴァーたちを事前のインフォで確認しただけで、
音を聴く前から既に僕の中には満足感が生まれた作品でもある。

この理由の一つは、久保田麻琴プロデュース以降の音源でまとめられていることだ。
久保田さんとの出会いが独立と重なったのは偶然なのだろうが、
今の充実した音楽制作と演奏活動からは、それが必然だったとしか思えない。

彼女本来の弾き語りは、以前よりゆったりしたテンポで歌われるようになり、
良い意味で見られた独特の間も減った(ように感じる)ことで深みが増したようだ。
繊細ながらも強くて太く…ライヴハウスではおさまりきらなくなった圧倒的な歌は、
数字的な大きさではなく、あくまでも " うた " が持つ力が浮かびあがり、
ステージを重ねるたびにヴォーカルが更新されているという実感がある。
さらに彼女の演奏スタイルとしては特別なものであったはずのバンド編成でも、
自分の音楽を当たり前のように鳴らしているのが、今の凄さだ。
だってドラムのカウントで始まる「ミシン」がハマダマリコしているのだから。

2017年以降の彼女についてはこのブログに書いてきたのでここまでとするが、
Vol.1とvol.2で聴ける全23曲は、現在の浜田真理子の音楽を存分に堪能できるだろう。

     **********

まるでひとつのライヴのようだな…は実際に聴いたVol.1の印象だ。
オープニングの「流れ星」から「胸の小箱」までが本編。
あがた森魚とのスペシャルな共演でアンコールの幕が開く「春の嵐の夜の手品師」。
遠藤ミチロウの「カノン」とオリジナル「純愛」を対にした見事な構成で聴かせた後、
ブルームーンカルテットのカヴァーで締めくくられる、とても彼女らしい展開は、
やはりひとつのライヴとして聴くことができる好編集だし、
一つひとつの曲は決して短くはないが、リモコンのスキップボタンを押すことなく、
通して聴かせてしまう魅力がこのライヴ盤にはあると思う。

     **********

彼女自身がブログでこのライヴ盤についてふれている。

・ライブ盤発売![ハマダマリコ的こころ]
ライブ盤についてその1[ハマダマリコ的こころ]

歌詞カードを含めたライナーの類を付けなかったことから、
12/3現在は前半の6曲分だけであるが、
物足りないと思う人のことを考えてくれて収録曲の解説までもしてくれている。

ブログを読んでも読まなくてもお楽しみいただけると思う…とのことわりがあるが、
確かにその通りではある。
しかし必読。
ファンは読むべきである。

ここでの本人による曲解説は、解説を超え、ひとつの曲と定義してもいいほどだ。
たとえば「のこされし者のうた」の解説を読む。
もちろん “ 読む “ ものなのだが、これは真理子さんの “ うた “ でもある。
この解説を読むことは、彼女の演奏とうたを聴くこととイコールだと思う。
歌を歌うのが歌だとは限らない…とは早川義夫の名言だが、そのとおりである。
読んでも読まなくてもお楽しみいただけるどころか、
読めば倍増以上の楽しみが待っていること請け合いだ。
太鼓判を押す。

NEXT TEARDROP / 浜田真理子 -2018-

最初に出てきた音がハマダマリコだったことに驚いてしまった。
事前インフォメーションとレコーディング・メンバーから、
勝手にバンド・サウンドを想像していたからだ。
もちろん冒頭の驚きはすぐ安心に変わり、期待が芽生え、
後は新しい彼女の音にふれていく幸せな40分を過ごした。

ネクスト・ティアドロップ
ネクスト・ティアドロップ

ジャケットとライナーのデザインを見れば今作と前作は姉妹のようである。
実際に対になっているという部分はあるのだろう。
2枚で1作のような意識も、もしかしたらあるのかもしれない。
しかし、聴いた感触と印象は明らかに違う。

真理子さんは前作の『Town Girl Blue』についてこう言っていた。

   ドロドロした感情を沈殿させ、その上澄みのところを歌った感じ
   決して真水じゃない
   元は泥水でそれをろ過したもの

『NEXT TEARDROP』は、ここからさらにろ過したと言えばいいのだろうか。
プロデューサーの久保田麻琴さんいわく " 風通しの良い作風 " 。
アルバムのオフィシャル・インフォには " 軽やかさ " なんて単語も見られた。
こうしたことが前作との違いを表すものだとは思うけれど、
しかし、よく聴けば…歌われる歌詞を追いながら聴いていけば、
いつもの浜田真理子だということもわかる。

「まちあわせ」で歌われている寂しさは、しかし何と肯定的なのだろう。
美しいメロディとヴォーカルの表現力。
こんな安っぽい形容しかできないのがもどかしいが、
あなたがいない寂しさよりも、あなたへの思いが勝る、素晴らしい歌だ。
浜田真理子をろ過すれば、こんな名曲が生まれるのである。
アルバムの色を決定づける1曲であり、実際にこの色で貫かれた作品だと思う。

" 風通しの良さ " と " 軽やかさ " というキーワードを、
僕は " ポジティヴ " に変換して提示したい。

聴きものはたくさんあるが、
まずはいわゆるこれまでの特徴である弾き語りではないスタイル。
特にシティ・ポップ感あふれる金延幸子の「あなたから遠くへ」は新境地。
70年代の名盤からの曲です…と紹介されても信じてしまうだろう出来栄えだ。
こんなアレンジに彼女がピッタリとハマるとは思わなかった。
好カヴァーだ。

オリジナルも粒ぞろい。
彼女のコンポーザーとしての素晴らしさ云々を説くのは今更だけれど、
アルバムの冒頭とエンディングに収録された「青い月のワルツ」。
こうしたインストゥルメンタルを聴くと、
歌と言葉が無いからこそ際立つメロディからそれをとても強く感じる。
本当にいいメロディを描くなぁと思う。
加えて、前作に収録された「Chat Noir」と「Yakumo」もそうだが、
彼女のインストは実にかっこいい音だということも言っておきたい。

「昨日の森」は彼女らしい和的なリズムを持つ歌詞が印象的。
「忘れ音」はどことなく細野晴臣を思い起こさせる、これまでありそうでなかった曲。
「さつきの憂うつ」と「Last Order」は2曲とも彼女の真骨頂だが、
見事に最新の音で『NEXT TEARDROP』しているのが素敵だ。
これらのような小品だが佳曲…が並んでいるのも今作の特徴だろう。

そして僕にとっては極め付けの曲が収録されている。
「サヨナラが降るとき」に出会ったのはライヴで新曲として披露された2015年。
それ以来、作品化してほしい曲のひとつだった。
" サヨナラ " というフレーズが、
まさに降ってくるようなピアノによって美しくポジティヴに響く。
歌われているとおり、旅立ちであるサヨナラを伝えてくれる。

   旅立ちの言葉
   新しい場所
   一人で強く歩く
   静かに強く歩く

サヨナラが歌われていても、残るのはこうしたフレーズだ。
お別れの向こう側にある希望を見せてくれるが、
しかし、やはり、どうしようもないサヨナラの切なさをも感じさせてくれるのが素晴らしい。
曲を聴けば、きっと僕のこうした思いをわかってもらえるだろう。

今年、僕にとってこのアルバムを超える作品がリリースされることは、
おそらくもうないだろう。
浜田真理子が新譜を出した年には、必ず毎回こう思う。


     **********


P.S. 「サヨナラが降るとき」

僕が彼女の音楽を素晴らしいと思う理由のひとつに、
その歌われる世界が限定されず、聴く側に置き換えられること…がある。
「サヨナラが降るとき」はその魅力が顕著に表れる曲だと思う。

この曲は、いわゆるAメロ、Bメロ、そしてサビ、間奏と、
それぞれ切り替わるところが絶妙で、音としてはもちろん、
曲を聴くリスナーの頭や心に浮かぶであろう情景や心象もそこで切り替わる。
こうした効果的な構成とアレンジにより、
聴く人それぞれのサヨナラが浮かび、広く深く、心に沁み入ってくる。
耳だけでなく、心も持っていかれるわけだ。

発売日の朝。
通勤時のBGMは『NEXT TEARDROP』だったのだが、
「サヨナラが降るとき」を聴いているあいだ、感情が大きく揺さぶられた。
涙が出てきて、電車に乗るどころではなくなった。
1本、見送る羽目になった。

悲しみや苦しさによる涙ではない。
心地よい涙だった。
きっとほんの少ししかないのだろうけれど、
それでも自分の中に確実にあるキレイな何かが涙になったのである。
誰の中にも存在するキレイなココロやモノをすくいあげてくれる。
こうした力が彼女の音楽にはある。

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Town Girl Blue / 浜田真理子 -2017-

新曲。
洋楽のカヴァー。
既発曲。
インストゥルメンタル。

これが「いまの私よ」という宣言に聴こえる冒頭の4曲。

  " 久保田麻琴が全編プロデュースしたDown to Earthな名盤誕生 "

この堂々としたコピーが眩しい『Town Girl Blue』は、
これまでのハマダマリコであり、
これまでにはないハマダマリコであり、
これからのハマダマリコである。

著者 :
ヴィヴィド・サウンド
発売日 : 2017-02-14

ライターの和田靜香さんが書いた素晴らしい解説があるが、
そこから真理子さんの発言を引用する。

  久保田さんのことはやられてきたお仕事含め、実はあまり良く知らなかったから、
  若いときの私なら自分のイメージが変わるかもって遠慮したかもしれないけど、
  もうこの年でしょう?自分がブレないって分かるから。
  それよりどんなことするのかな?という好奇心のがずっと勝ってるのよ。

久保田麻琴がプロデュースした作品なのだけれど、
結果としてその久保田さんにプロデュースさせたとも言える作品なのだろう。

再び和田さんの解説から。

  今回はドロドロした感情を沈殿させ、その上澄みのところを歌った感じかな。
  決して真水じゃないのよ。元は泥水でそれをろ過したもの。

この発言は、真理子さんの音楽に出会った当初に、
僕が感じたロック的な格好良さをカタチにしてくれたように思えた。
例えば「爪紅のワルツ」を聴き、僕が直感で連想したのが、
ローリング・ストーンズの「ダンシング・ウィズ・ミスターD」だったり、
1980年のRCサクセションを「ミシン」という曲に昇華させる才能にふれたりしてきたが、
こうした曲の背景にロック的な何かを見て聴いてしまう自分の感性が肯定されたようだった。

それにしても、かっこいい音だ。
例えば映画のサウンドトラックで使われているかのような「Yakumo」。
無国籍だが、決して日本ではない国…街の景色が浮かぶ。
季節も不明だが、おそらく暑い頃だろうか。
青空を思い浮かべながらもカラッとした夕暮れも見えてくる。
何よりもスリリングなメロディとアレンジが素晴らしい。
しかし、この曲で浮かぶ映像は、続く「愛で殺したい」でガラッと変わる。
サウンドは引き継がれながらも一気に昭和の日本へ。
まさに面目躍如だが、いつものピアノの弾き語りではないから、
やはり新しいハマダマリコである。
「Yakumo」が終わり、一瞬の間があいて「愛を殺したい」が始まる瞬間。
身体に電気が走る。
まるでメドレーのようなこの2曲の流れを聴くたびに僕はゾクゾクしている。

リズム隊にのって生きいきと歌うカヴァー。
美しくも不適、かつ映像が浮かぶインストゥルメンタル。
現在のイメージを超えたこうした要素を含め、
久保田さんがこだわりのアナログ録音で盤に刻み込んだ2017年最新型の浜田真理子。
素晴らしい。

Live. La solitude / 浜田真理子 -2014-

5月のツアー会場で、そして美音堂サイトでの通販でと先行発売はありましたが、
この6月末に、晴れて正式にリリースされました。

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Live. La solitude

ディスクをCDプレーヤーにセットしてスタート・ボタンを押すと、
聴こえてきたのはピアノでも拍手でもなく、
ステージに向かう真理子さんの足音でした。
まずはこのオープニングに興奮しますが、その後の拍手と、
少しもったいぶったイントロから歌いだされる冒頭の歌詞が、
" 早く抱いて うまく抱いて " です。
まさに浜田真理子、9年ぶりのライヴ盤として実に相応しい幕開けです。

1曲目の「早く抱いて」が終わると、聴こえてくるはずの拍手がありません。
おや?…と思いながら聴き続けると、曲間の拍手はすべて編集で消されていました。
拍手が収録されているのはオープニングとエンディングのみ。
しかし、ライヴ盤でありながらのこの編集には制作サイドの強い意志を感じます。
ここで思い出すのが、アルバムの先行発売ライヴ・ツアーのコンセプトです。
以下、抜粋。

 テーマは「ひとり」
 ピアノ弾き語りによるひとり演奏、ひとり歌、「個」、「孤」の歌物語
 聴く人もひとりで物語に浸り、ひとりを堪能し、会場全体で「ひとり」を共有して欲しい

見事にこの内容が反映されたライヴ盤ではないでしょうか。
曲が終わるごとに訪れる静寂が、
まさに「個」と「孤」を表現しているのだな…と感じます。
『Live. La solitude』は、ライヴの再現や記録としてではなく、
当日の音源を使って、改めて " ひとり " というコンセプトを、
作品として提示してくれた素晴らしいライヴ・アルバムなのだと思います。

いきなりの「早く抱いて」と「りんごのひとりごと」の緊張感。
カヴァーが中心なのも、独特のこんな雰囲気を生んでいる要因です。
オリジナルの「Love You Long」でホッとしますが、そんな気分はここだけ。
あとはラストまで「個」と「孤」が繰り返され、
「ひとり」で「ひとり」を堪能し、「ひとり」に浸されます。

最後の " どうもありがとうございました " の挨拶と拍手。
ここにきてやっと「ひとり」から解放されますが、
アルバムを聴いているあいだにこれだけ自分の中に、
そして自分の内に気持ちよくおりていける作品には、
なかなか…そうそう…簡単には出会えないように思いました。

実際のライヴでは収録された以外にも歌われた曲があり、
特に「満月の夕」が未収録なのは残念に思っていましたが、
こうして聴くと、構成はこれしかないという流れになっています。
特に中盤の「Hallelujah」からインストの「予感」、
そして「夕凪のとき」と続くあたりの、
前半と後半をつなぐ流れもコントラストも見事です。
スピーカーの前で歌とピアノに酔うしかありません。
手垢にまみれたスタンダードであるはずの「愛の讃歌」の美しさも白眉です。

真理子さん自身によるライナー(必読!)でも書かれているように、
カヴァーは曲を分解して組み立て直すということですが、
曲を構成する様々な要素の核を取り出したうえで、それを行うのだと思います。
そうでなければあの純度の高いカヴァーは生まれないでしょう。
彼女のオリジナリティが存分に活かされた素晴らしいカヴァーを聴くと、
名曲は誰が歌っても名曲になるとは限らないのだな…という、
逆説的なことを思い知らされます。

アルバムを締めくくるのは、オープニングと対をなす、
ステージを後にする真理子さんの足音です。
その去っていき方の何という臨場感。
そしてカッコよさ!
足音をカッコイイと思ったのは、生まれて初めてかもしれません。

今年、僕にとってこのアルバムを超える作品がリリースされることはないでしょう。
これは浜田真理子が新譜を出す年に、毎回必ず思うことです。

But Beautiful / 浜田真理子 -2013-

浜田真理子、4年ぶりになる5枚目のオリジナル・アルバムが発売された。
タイトルは『But Beautiful』。
その名の通り、何もかもが美しいアルバムであり、どこまでも美しい音楽である。


CDとして作品化されたものよりも先に、新作発売記念ライヴで全曲を聴いた。
ライヴではアルバムの全曲を、しかもその収録順に歌ってくれたわけだが、
当然ライヴはピアノの弾き語りになる。
はたして…いつものハマダマリコ的な世界が展開されたわけだが、
何てったって新曲であるからして、受けた印象はこれまでとは同じようで違う。
いきなり冒頭から ♪ あなたには顔がない わたしには声がない…である。
ただし、この一節から僕自身が感じる強烈な違和感こそが浜田真理子の魅力だ。
直前の自分がどんな精神状態であっても、彼女の歌とピアノが空気を震わせた瞬間、
一気にハマダワールドへ引き込まれてしまう。
いつ、どんなライヴであってもそれは変わらない。
ライヴで歌われた新曲を聴いた結果、アルバムに触れる前から、
少なくとも僕にとってのそれは大傑作と確信することになった。

新作について事前にわかっていた情報は、弾き語りのソロ録音ではなくアンサンブル。
3rdアルバム『夜も昼も』での最小限アンサンブル・スタイルを踏襲しながらも、
新しい形に挑戦…ということだった。
彼女自身のブログではレコーディングの様子が綴られていた
これを読んだときは本当に驚いたが、その音がまったく想像できないながらも、
もちろん期待に胸とココロをを大きく膨らませていた。

オープニングの「森へ行きましょう」がいきなり凄い。
これからこの曲を聴くたびに何が歌われているのかを考えることになるだろう。

続く「ミシン」がこれまた凄い。
事前情報から想像していたピアノの弾き語りにストリングスの味付け…とはまったく違う、
曲の本質を浮かび上がらせる素晴らしいアレンジだ。

「遠い場所から」には無駄な音がひとつもない。
一音も付け足す必要ははなく、一音でも欠かすことはできない。

ハマダマリコ節が炸裂した「ためいき小唄」。
こういったメロディを歌わせたら右に出るものはいないだろう。
♪ ためいきためいきためいきためいき…のリフレインが美しい。

ライヴでは個人的白眉だった「花散らしの雨」。
語って歌い、歌って語るというシャンソンを意識したスタイルとのことだ。
あまりにもライヴがカッコ良かったので、
スタジオ・ヴァージョンはライヴに比べて物足りなさを感じてしまったが、
聴いていくうちにそんな気持ちは解消していった。
それでも、やはりライヴでこそ聴きたい曲だ。

たき火をしているように…なレコーディングだったという「ちょっとひとこと」は、
参加した各メンバーの出す音が主張することなく目立ちながら浜田真理子している。

ライヴで聴く透き通った美しさがそのままパックされた「はためいて」。

ファンにはお馴染みの名曲でやっとCD化された「骨董屋」。
こうして冷静に聴くと、そのストーリーを知っていてもあらためて引き込まれる。

「Good Bye, Love」は、
ライヴのMCで知ることになった愉快なレコーディングのエピソードのおかげで、
あるシーンが目に浮かび笑ってしまうのだが、もちろんそんな風に聴く曲ではない。
歌詞を読めばわかってもらえるだろうと思う。

メロトロンがあまりにも美しい「啓示」。
こうしたある種の宗教的にも取れるテーマは珍しいというか、
これまではなかったのではないか。短いながらも大きな作品だ。

「あなたなしで」は、
収録曲の中ではいちばんのハマダマリコ的王道のラヴ・ソング。

アルバムを締めくくるのは「四十雀」の続編であろうか…という「五十雀」。
とても短い曲だが、残る余韻の深さは底なしだ。
そして、何よりもポジティヴに終わるのが素晴らしい。

あぁ、結局は全曲に触れてしまった…。

発売記念ライヴを渋谷のクアトロで観たその夜、
真夜中にそっとこのCDを聴いた。
想像していた以上に驚きの音だったけれど、間違いなくハマダマリコの世界。
収録曲すべてが素晴らしかった。
ふるえて、わらえて、なけてくる。
But Beautiful。
僕にとって美しいと呼べるのはこういう音楽を指す。

あなたの心に / 浜田真理子 -2012-

オフィシャル・サイトから引用。

 浜田真理子 初のカバーアルバム。
 「青葉城恋唄」「夜明けのうた」をはじめ珠玉の名曲をカバー。
 ライブではすでにお馴染みの曲もありますが、本作では10曲中8曲をピアノ弾き語りではなく、
 ギター、ベース、パーカッション、ストリングスなどを取り入れ、流麗なアレンジで仕上げた、
 歌手・浜田真理子の魅力を伝える『The other side of mariko』とも呼べる作品になりました。
 ジャケット・イラストレーションはsakanaの西脇一弘氏。

制作過程については、真理子さんのブログで簡単にふれられているので、
そちらを参考に。→ 春待ち

オリジナルではなくカヴァー・アルバム。
カヴァー自体はライヴでも定番なので何の問題も無いけれど、
最大のポイントはピアノの弾き語りではない作品ということだろう。
それをどう捉えるか…だが、僕は期待のほうが大きかった。
最初に接した彼女のアルバムが 『夜も昼も』 だったこともあるのかもしれない。
ピアノ以外の楽器が入ることに何の違和感もない。

早速、通販で手に入れて聴いた。

オリジナルは1曲も無いけれど、ライヴでお馴染みの曲、
そして 『おみあいCD』 に収録されていた曲もあるので普通に入っていける。
肝心のバンド・サウンドは…これがとても心地よい。
各々が決して主張するような音ではないが、
彼女のうたをうまく活かしたアレンジであり、
切ない曲も、明るい曲も、実に聴かせてくれる。

こうした音をバックにした浜田真理子のヴォーカルは、
当然いつものようでいつものようでは無い。
でも、それは聴く側の耳が慣れていないだけであり、何度か聴くにつれ、
まったく違和感なく馴染むようになった。
それどころか、彼女にとっては新機軸なのだろうけれど、
これまでもこうしたサウンドで作品が発表されていたかのように聴こえたりする。

「青葉城恋唄」は、この曲を好きか嫌いかは別にして、
知らない人はいないであろう有名な曲だけれど、これが絶品だ。
僕が常々思うのが、こうした誰もが知っている曲のハマダ的解釈だ。
有名曲であればあるほど、彼女の個性がそこに出る。
洋楽、邦楽問わず、オリジナル曲に近いカヴァーになることが素晴らしい。
松山千春の「これ以上」はライヴで聴いた時もいいなと思ったが、
こうしてスタジオ録音の作品として聴くのもいい。
ギターとピアノだけで歌われるが、いつもの浜田真理子とは違う。そこがいい。
ファンにはお馴染みの名曲「水の都に雨が降る」。
これは問題作かも…というのは大袈裟だろうけれど、
思い入れが強いファンを多く持つ曲だと思うので、そんな風に感じた。
僕は…良かった。いいヴァージョンだ。
まぁ曲自体が素晴らしいので、どんなアレンジでも受け止められるからだろう。
タイトル曲である「あなたの心に」。
こういった軽快なのに切ないという曲は大好きだ。泣きたくなってくる。
友川かずきの「祭りの花を買いに行く」は、イントロから渋いフレーズがカッコイイが、
ヴォーカルが入った途端、ハマダ・ワールドになるのが快感だ。
以上がアルバムのA面(笑)になる。

B面1曲目の「赤い花白い花」と3曲目の「聞かせてよ愛の言葉を」は、
いつものピアノ弾き語りの浜田真理子スタイルなので、安心して聴ける。
ただ、このアルバムでは良い意味で浮いているので、
だからこそ、彼女の弾き語りの魅力をあらためて感じることができる。
4枚目のオリジナル・アルバム 『うたかた』 に収録されている「哀しみのソレアード」。
どうしてここでも取り上げたのだろうか。
ある時期の中島みゆき的なアレンジで、僕はお気に入りだけれど。
「街の灯り」にまつわるエピソードは熱心なファンには知られているだろう。
こんな想いのやりとりがあるから、僕は音楽を聴くのだと思う。
アルバムを締めくくるのは「夜明けのうた」。
希望のうた、だ。素晴らしい。

これは単なる企画アルバムではない。
いきなり傑作が届けられた。
今の浜田真理子がここにいる。

浜田真理子を知っていますか?

今年、2010年の初夏に行なわれた浜田真理子の東北ツアーに伴い、
ミュージックギルドの担当者が、プロモーションとして 『おみあいCD』 という、
何と未発表ライヴ音源のCDを東北限定、しかも Take Free! で配布した。

 " 彼女は世の中にもっと知られるべきアーティストである "
 " 彼女の音楽を沢山のみなさんに知ってもらいたい "

このような担当者の強い想いで、
おみあい写真ならぬ 、おみあいCDを制作したということだった。

僕自身、東北ツアー初日の盛岡公演を観たのだが、
もちろんこのCDの存在もツアー前にキャッチしていた。
※参考までに、こんなブログ記事がある

ただ、入手経路が無い。
まさかCDをもらいにだけ東北まで行くわけにもいかず、
どうしたものか…と思っていたが、
盛岡に関する情報を集めていたときに、
某所でこのCDをプレゼントするという企画を発見!
ダメもとで申し込んでみたら見事に当選…というか、送って頂けた。

 この企画は会員向けとしてのものであり、会員以外はもちろん、
 まさか県外からの応募があることは想定していませんでした…

という内容のご丁寧な手紙が同封されていた。
どうやら、何も考えずに応募してしまった僕であるが、
担当の方には感謝の気持ちでいっぱいで、とにかく感激だった。

CIMG8037.jpg CIMG8038.jpg CIMG8040.jpg

ご覧のように、ジャケット(?)も良い。
ジャケ裏には彼女のアルバムのディスコグラフィ。
東北ツアーのスケジュールも入っていた。
僕のはもちろん盛岡ヴァージョン。
おそらくライヴを開催した場所の数だけのヴァージョンがあるのだろう。

そして、肝心のCDを実際に聴いたのだが、
これがまた、とんでもなく素晴らしいものだったのである。

続きを読む

デコレの子守唄

" blueさんはこの本はご存じでしょうか? 付属のCDがとてもいいですよ " と、
昨年末に、浜田真理子ファンの方からメールで、ある絵本をご紹介頂いた。

デコレ村は、その盛り上がり当時に一応チェックは済ませていたつもりだったが、これは迂闊!
まったくのスルーだった。
2008年の5月に発売されていたらしい。

帯のコピーにはこうある。

  『デコレ村』 からちょっぴり泣ける物語と音楽(CD)をお届けします。

問題の付属CDは全5曲。 唄と演奏はデコレ村のブゥ博士。そう、浜田真理子である。
タイトル通り、子守唄というテーマで統一されているのだろうが、この収録曲が凄い。

「ブラームスの子守唄」
「竹田の子守唄」
「Summer Time」
「Hush A Bye」
「アザミ嬢のララバイ」

ご覧の通り、ブゥ博士の弾き語りを想像しただけで…という名曲が並んでいる。
確かこのうち2~3曲がMySpaceで試聴できたと記憶しているが、
それでも、ファンならばそれぞれをフルで聴いてみたいと思うだろう。

CIMG7743.jpg

もちろん僕も早速入手した。

「竹田の子守唄」は 『太陽に歌って』 に収録されていたライヴ・ヴァージョンかなぁ?
「アザミ嬢のララバイ」は、 『元気ですか』 に収録された「世情」とのメドレーとは違うのかなぁ?

オムニバス,奈歩,岩崎宏美,Bank Band,小谷美紗子Trio+100s,徳永英明,坂本冬美,槇原敬之,小泉今日子 with GOTH-TRAD,浜田真理子,福山雅治 FUKUYAMA ENGINEERING GOLDEN OLDIES CLUB BAND
ヤマハミュージックコミュニケーションズ
発売日:2006-06-14

CDを手に取り、こんなことを思いながらプレーヤーにセット。
流れてきたのは、本当に浜田真理子の声とピアノだった。

結論としては、僕の知る限り、この5曲はここでしか聴けないはずだ。
「ブラームスの子守唄」は1分間の美しすぎる ラララ~♪ だし、
「竹田の子守唄」はスタジオ録音で、既発とはまったくの別ヴァージョンだったし、
「Summer Time」と「Hush A Bye」は実に彼女らしい仕上がりで、これぞハマダ・カヴァーの真骨頂だし、
「アザミ嬢のララバイ」は「世情」とのメドレーではなく、単独曲としてのカヴァーだった。

当然、歌とピアノは素晴らしい。
言うことは、無い。
それにしても、ブラームスと中島みゆきを一緒にしてもまったく違和感を感じない。
浜田真理子…いや、ブゥ博士、恐るべし!

しかし、こんな作品がシークレットなんて、もったいないなぁ。

うたかた / 浜田真理子 -2009-

本当ならばレコ発ライヴ前に取り上げたかったのだが、順番が逆になってしまった。

浜田真理子、三年ぶりのオリジナル4thアルバム 『うたかた』 。
僕は一足早く大阪のライヴ会場で手に入れた
その日から聴かない日は一日たりとも無い。

浜田真理子
美音堂
発売日:2009-12-21

彼女がこれまで書き溜めていた曲を一気にレコーディングしたこのアルバムは、
僕が聴いた、今年発表になった洋邦の新作オリジナル・アルバムの中でもダントツのBEST1だ。
収録曲のほとんどがライヴで既に歌われていたが、まったく新しい気持ちで聴くことができるし、
実際に飛び出してくる音も最新の浜田真理子の音楽であり、待っただけある傑作だ。

ひらがなが似合うその歌詞も、これ以上シンプルになりようの無い言葉で綴られている。
まさにシンプル・ラヴ・ソング。

ノグチアツシのアコースティック・ギターをバックに歌われる「みちくさ」が素晴らしい。
レコ発ライヴではピアノで弾き語られていたが、
作品化にあたってはギターにして大正解だったと思う。
物悲しい響きはアコギならではだし、
ここにあのヴォーカルが乗ればオンリー・ワンとなる。
これこそがハマダ・ミュージックの魅力!

タイトル曲の「うたかた」ではウーリッツァーのエレピが使われており、
歌詞に出てくる " 深い海の底 " という雰囲気にバッチリとはまっている。
「アンダンテ」では、そのウーリッツァーとアコギのアンサンブルが心地よく響く。
この楽器は彼女の歌にピッタリだと思う。今後も効果的に使用して欲しい。

個人的に印象に残るのは、曲のイントロの素晴らしさ、美しさだ。
「ひそやかなうた」のイマジン風には思わずニヤリだし、
「愛の風」「みちくさ」「めぐりあい」「アンダンテ」「Treasure」など、
一度聴いたら耳に残る美しいフレーズが本当に素晴らしい。

ところで、彼女自身はこのアルバムについてこんな風なことを語っている。

  書きためていた曲が形になって、やっとこれで前に進めるなと思った。
  曲のストックがゼロになってしまうことの不安もあって、ミニアルバムにしようかと思っていたが、
  からっぽになった自分や、そこから生まれる歌にも興味を持ち、結局は全部出した。

僕はこれを読んで、過去に良く似たことがあったのを思い出した。
それはRCサクセションが休止した後に、麗蘭に向かった仲井戸麗市だ。
あのときのチャボも、書き溜めていた曲を一気に麗蘭を通して発表した。
その結果はここに書くまでも無いだろう。

自分の中にあるものを一気に吐き出すと言うのは、
きっと物凄い快感であり喜びであり充実感なんだろう。
発表される作品にそんな作者の思いや気持ちが込められるわけだから、
傑作が生まれることは、もう必然なのではないかと思う。

新作が出たばかりだが、からっぽになった彼女が次に歌うのはいったいどんな歌なのか。
早くも楽しみで仕方が無い。
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